横浜の「十三夜の月」

横浜に越してきて、一ヶ月が経つ。先日、義妹が車で妻と元町にあるフランスの冷凍食材を扱う店に買い出しに行くので一緒に連れて行ってもらった。久しぶりに快晴の日曜日で、家から30分ぐらいで元町に着いた。何年ぶりかで歩行者天国の元町を杖ついてゆっくりと散策した。


喫茶店も家具屋さんも以前と何も変わらない。元町は高い建物がないので真っ青な空が通りの向こういっぱいに広がっている。二人は買い物をするというので私はベンチに座り、一人で待ちながら行き来する人たちを眺めていた。相変わらずこの通りは犬を連れた人が多い。老夫婦、若い家族連れ、そのありふれた景色をボンヤリと見ていると急に何故か胸が締め付けられ「やっぱり生きていて良かった…」の感情が押し寄せて来て泣きそうになった、いつもの元町に…。在るべき店があり、大きなビルに吸収されずに旧くからの個人商店が残る元町のあり様に気持ちが入ったのかもしれない。

帰り路、街並みを抜けて少し高台の住宅街に入る。カーブを切り前方が開けた瞬間に夜空に凄く綺麗な月が現れた。この日は十三夜の月であった。