ドラマ「ハルカの光」の撮影現場が灯す温かいヒカリ

   

「ドラマを観ている人の想いをスーッと画面に惹きつけるように……そんな気持ちをあなたも感じながら……ね」私の右側に添えられたアリフのカメラを覗きながらカメラマンの河津さんが、ピントを合わせている助手さんに小声で囁いている。私の前、カメラの先にはこのドラマのヒロイン・黒島結菜さんと店長役の古舘寛治さん、その奥には赤い縁取りの大きなガラス窓に冬の日差しが差し込んでいる。私の左隣には渡辺大知君。ここは旧い街角に撮影場所として作られた、照明の名作を展示販売している店である。私と大知君はここに客として来ている。

11月の末、キャストは私と前記の三人。一つの素晴らしい名作照明を囲んで、穏やかでゆったりと的確な一人ひとりの演技が素晴らしい。私はその中にいることが、なにか、もの凄く貴重でかけがえのない大切な時間を過ごしているようで幸せな場所であった。撮影自体が大きな構えを取らないで、感染症にも気を遣いながら、みんながプロで無駄なく動き、プロデューサーの長澤さんが自ら動いて静かに次の用意をされている。私たち俳優は微妙なニュアンスの雰囲気を演じることに傾注し、後は監督の松原さんに任せている。撮影という虚構の中の関係なのであるが、それ故にか、このキャスト、スタッフ含めて十人くらいの人たちの貌が見えて、私には堪らなく愉しく気持ちが良い撮影現場であった。私達が囲むテーブルの前に置かれた一つの照明の灯りそれ自体が素晴らしい光を放っているのだが、また同時に影までもが何かを表している。

東日本大震災の十年目復興に向けてのドラマとしての光の物語である。ハルカ役の黒島さんを軸にしてジンワリと、人の胸に、心に染むドラマになっていると思う。あの撮影現場の雰囲気を伝えることができれば良いなと思う。ドラマを届けるということは皆がスーッと静かに画面に惹きつける、惹きつけられることなのだろうと思った。

NHK ドラマ「ハルカの光」(全5話) 

出演:黒島結菜、古舘寛治、イッセー尾形、渡辺大知ほか

脚本:矢島弘一 プロデューサー/演出:長澤佳也 松原弘志

制作統括:樋口俊一(NHK) 川崎直子(NHKエンタープライズ) 小川直彦(スパークル)

*2024年1月27日(土)午後11時30分〜 NHK総合で再放送されます

*第2話のゲストとして出演します。2024年2月3日(土)午後11時30分〜