映画『ザ・ライダー』を観る。クロエ・ジャオ監督

やっと配信で映画『ザ・ライダー』を観た。中国系女性監督が撮った、アメリカの片田舎でのロデオを取り巻く人間模様である。いわゆる現代のカウボーイの姿なのであるが、優しく包まれ、それでいて夢の先をシリアスな目線で描かれている。

数年前に、私自身が頭を傷つけてその後遺症を抱え、以前のような自分のあるべき姿を見失い、アイデンティティを模索し苦しんだだけに、また元の居場所に戻ろうとする主人公の思いと行動に共感し、彼の気持ちの流れに胸がしめつけられた。そして家族、友人のあり様と、カメラが捉えた見事な大自然の風景の素晴らしさに息を呑む。ラストの結末に私は「それでも生きていく」という人間の切なさと強さを思った。

キャスト・エンドロールで家族も友人も俳優でなく本人が演じていることがわかり、そこに映画というものの可能性と奇跡が信じられ、私は静かな余韻と感動に包み込まれた。

この3月には監督の新作『ノマドランド』が公開されるという。愉しみである。